そらさんの日記

取り留めもないことを書いていくブログです。音楽や文字が中心になるかも。 ついったー→ @naname_yokotate

【夢の話】未来のどこかの建物の話

「次はここだね」


目の前には高い建物。白かった壁には蔦が這っている。陽を取り込むガラスは砕け、中だけでは我慢できないと、枝を伸ばしている。


「ここは何なんすか」

遅れて乗り物から降りた女が言う。


「商業複合施設。色んな店や、遊ぶ場所がひとところにまとまった場所だよ」


「ふぅん」


興味無さげな反応。

今は存在しないものだからその反応は肯ける。自分もきっと同じようになるだろう、実感がないからだ。

硝子が割れ、意味をなさなくなっている扉から建物に入る。何時振りにここに来るだろうか。前に来たのは幼い頃だった気がする。


建物の中も、外と同じように朽ちていた。緑が生い茂っている中を歩く。殆どの店は開店していた。店を閉じる余裕が無かったのか、閉じる前にそうなってしまったのか。賑わっていたままに、今に浸食されていた。


「こんな服が売ってたんすねぇ。昔の人は不思議っすねぇ」


女性ものの服を不可解だと、そう見る女。

たしかに今では考えられない服装だ。


「そうだねぇ、不思議だねぇ」


建物内を歩き回ったが、めぼしいものは無かった。そろそろ出ようかと思った時、ある扉の の前に辿り着いた。あぁ、こんな場所もあったなと扉を撫でる。子供の頃そうしたように、扉の横の三角に触れるとあの頃のように扉が開く。

まさか、と思いながらその先の箱に入ると、上に移動する旨を電子音声が伝えてくる。


箱の外が下に落ちていくのを見て、不思議っすねぇ、と繰り返す女に不思議だねぇ、と返す。


箱が止まり、外に出た先には急な傾斜と、打ち込まれた梯子。なんでこんな風にしたのか子供の頃はさっぱりわからなかったが、今見てもわからない。梯子を上り切ると、その先には小さな部屋と、その両脇に扉があった。

部屋の中の椅子と、その前に突き出た操縦桿を見て懐かしいなと思う。なんでかわからないが、そこに座るのがとても楽しかった記憶がある。


横の扉を開いて中に入る。

小さな部屋で、むぁ、といぐさの匂いが鼻を突く。日に焼けた色の部屋の隅に、ビニルに包まれた、白を基調に薄桃色の模様が描かれた着物があった。そういえばこの頃だったかと思いながら着物を撫でる。あのこに着て欲しいと言ったら嫌がられるだろうか、きっと似合うのだけど。これを着た彼女を思い浮かべて顔が緩むのを感じた後、部屋から出た。


そこで目が覚めた。