【夢の話】どこかの古い世界の話
草の匂いと、土の匂いがした。
土色のレンガで建てられた、砦といえばいいのだろうか。大きな建物が目の前にあった。
砦の周りには傷ついた人が沢山いた。包帯に血をにじませた人、松葉杖をついている人、椅子に座ってぼうとしている人。白衣を着た人が、担架に載せた誰かを砦の中に運んでいく。
ここは砦ではなくて、病院なのかも知れない。
そう気づくと、さっきまでは感じなかった血の匂いや、どことなく重たい空気が体を包んでくる。
ざり、と後退る。体が勝手に動くのだ。
後ろの何か、大きなものににぶつかる。振り返ると、大きな体の男と、優しげな女。男は僕の頭に手をのせ、何かを言いながら撫でる。大丈夫だ、と言われたように見える。
男が建物の方に歩いていく。女はそれについて行こうとして、気づいたかのように僕の手を取り、歩き始めた。女の手は大きいけど華奢で、柔らかくて暖かい。手が大きいのではなくて僕の手が小さいのだと、小さくて幼い自分の手を見て気づいた。
僕はこの人たちと旅をしてきたのだ。それはなんとなくわかっている。でもなんで旅をしているのだろうか。この人たちは僕がいないほうがなんでも上手くいくはずなんだ。
土の道を踏み歩きながら思う。建物に入った。入ったと思ったらそれは門で、中には建物と、石畳の渡り廊下。中庭があった。そこは渡り廊下と違って、土の地面。外の道と同じように踏み固められていて、所々背の低い草が生えている。
女に手を引かれながら周りを観察する。こんな景色は写真や映画、ゲームの中でしか見たことがなくて、とても珍しいから。珍しいと感じていない僕も僕の中にいて、怪訝な目で僕を見ている。
きょろきょろとしている僕が面白かったのか、女がクスクスと笑う。笑いながら何かを言う。口の動きが長くて、何を言っているのかさっぱりわからない。首をかしげると、女はまたクスクスと笑う。
なんで笑うのかと口を尖らせる僕の手を引きながら、また歩き始める。その時後頭部に何かがぶつかったのを感じた。なんだろうと後ろを見ると、物陰から何かが出てきた。
そこで目が覚めた。